え? どうしてなんですか?

あ、そうなんですか…。
 
仕事帰りによく行く、自宅近くの中華料理屋のおばちゃんは、ナカナカ気が利いていて、例えば、偏食家の私がキクラゲだけを皿に残して帰ると、
次に同じ料理を頼んだときにはキチンと「キクラゲ抜き」になって出てくるのです。勿論、私がそうするよう頼んだわけでもありませんし、おばちゃんの方もその「特別サービス」を何らかアピールするわけでもありません。
 
要はそこに「無言の対話」が成立しているわけです。一時期は毎日のように足を運んでいて、確かに顔馴染みではあるのですが、しかし、取り立てて言葉を交わしたことがあるわけでもありません。或るときなど、おばちゃんが「キクラゲ抜き」でオーダーしたにも関わらず、厨房が間違って「キクラゲ入り」を出してきたことで一悶着、厨房を散々罵倒した挙句にキクラゲを手で摘んで(!)ゴミ箱に捨てていました。勿論、私はその遣り取りを偶々目撃してしまっただけで、おばちゃんは私に見られていることに気が付いてはいません。
ともあれ、サービス業に携わる人間としては大いに見習うべき姿勢であろうと、中華料理屋の汚いトイレで独り頷首するそんな私は品川ラズベリーで責任者を勤めさせていただいている者です。
 
そんな或る日の話、いつものようにその中華料理屋で12時間遅れの「夕食」を済ませてレジで支払いしているとおばちゃんがいつにない笑顔で一言。
 
ワタシ、今日で最後なんです。
 
料理の注文で声をかける以外、私とは世間話すらしたことがないそのおばちゃんが唐突にそんなことを、不意を衝かれた私の口から出た唯一の言葉が冒頭の薄情なフレーズだったわけです。結局、その一言と共にいつもよりは少し深くアタマを下げて店をあとにしたわけなのですが、まあ、彼女も私に何から気の利いた労いの言葉を期待してそんな告白をしたわけでもないにせよ、しかし、我ながら薄情な物言いしかできない人間だな、と、そんな自分がちょっと嫌になりました。
 
さて、少し前の話になるのですが、色々と仕事を教わった職場の先輩スタッフが事情があって退店することに、当人からその話を最初に聞いたときに私の口を衝いて出たのも、実は冒頭のそれと寸分違わぬフレーズでした。勿論、私がそれ以外の言葉を持たないわけでも、それに付随した或る種の感情を有していないわけでもないのですが、咄嗟のこととは言え、しかし、そんなフレーズしか出てこない私は相変わらず他者に対する関心が極端に稀薄な人間なんだなとあらためて思い当たりました。
 
我が職場の課題はチームプレーの強化です。どんなに優れた能力を持つ人間でも、できることには当然限界があります。優れたチームプレーの相乗効果は個人の持つ能力を遥かに上回り、各々個人の能力すら高め得るものです。先に書いた事情もあって、少し前から職場のメンバーが若干入れ替わっています。「チームプレーの強化」を課題として掲げるには絶好のタイミング、そのためにはまず私自身が(物心ついて以来の)積年の課題を克服しなくてはなりません。まあ、「今さら…」と思ってしまうところもなきにしもあらずなのですが、今の職を得るまで、その克服を回避すべく自堕落に生きてきてしまったことを改める機会に漸く巡り合えたのを幸いとすべく、否、自身でも驚いてしまうくらいヤル気になっていたりもします。
 
ちなみに、他者への関心が人並みな、まあ、要はマトモな人間が返すべきフレーズは多分これなんだろうな、と私が勝手に想像してみたのが表題のそれです。私の課題はつまり、その同じ場面でそのフレーズが当然のように出てくる人間になること、否、いい歳をして一体何を言っているのかと思われるかも知れませんが、私は大真面目なんですよ。
 
確固たる目的とそれを実現するための明確な課題、それを与えてくれる現在の環境に私は深く感謝をしています。

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